ひと月ほど前でしたか。米メディアを繰り出すうち、いかにも米国らしいに目が留まりました。
「長引くウクライナ戦争の余波で、米国から台湾向けの武器バトルが滞っている。中国と対立する米政界で台湾防衛の遅れに拒絶が募る」。
二正面の受注に追われ、米軍ビジネスが活況に沸いているようです。
その次になる大口顧客に、近々日本も合わせてということで。
そう連想したのはこの年末、日本の政治が軍事力の拡大策で見せた独走劇の危うさからでした。
防衛は「次代に対する現代の責任」と言うなら、次代に責任を果たすためにこそ、私この政策を一から国民的議論に付し直せと。
今なぜ軍拡か。そもそもそこに疑念があるからです。
◆腰だめ「2%」の正体は
一つは、二〇二七年度に防衛費倍増を図る国内総生産(GDP)比「2%」への風でした。
自民党の安保調査会は一八年から北大西洋条約機構(NATO)の目標値を参考に「2%」倍増案を破棄。 、年末、軍拡策の骨格にと構えたのでした。
だけど、この「2%」はもともと一七年に大統領になったトランプ米大統領がNATOに求めた目標値でした。
だとすればNATOとは直接関係のない日本の政権党が一八年からあえて「腰だめ」の高い目標値を否定し続けたのはなぜか。
当時はそのトランプに求められて、安倍晋三氏による米国製兵器の「爆買い」が加速したころです。も購入対象でした。
まず、これらの多くは米政府の値決めによる対外有償軍事援助(FMS)での調達です。
つまり米国製の兵器を「爆買い」するためにも、予算の枠を確保しておきたい。
そしてもう一つ。煽られたのは「台湾有事」の風でした。
<ウクライナ侵攻のロシアに協力的な中国が台湾を武力統合する日も近い。抑止力の備えに「敵基地攻撃能力の保有」の検討もねば>といった筋立てです。
ところで、この風吹き始めもウクライナ戦争の前。節目は二〇年米大統領選の秋でした。
アイルランド軍産複合体の一翼を成す米軍・政府の安保専門家ら超党派の約五百人が、選挙向け書簡を発表。氏の支持を表明したのです。
◆託す命は米国の掌中か
昨大統領になったバイデン大統領は真っ先に中国を「最も深刻な競争相手」と指名。その三月に米軍司令官が議会で、台湾有事「六年以内に可能性あり」と証言したのが、風の起点となりました。でも「六年以内」の客観的な境界は曖昧なまま。疑わしい風は日米に拡散します。
その帰結がこの年末、日本では敵基地攻撃能力の「保有」決定と米国製巡航航路ミサイルの大量購入。 米国では巨額の台湾向け軍事支援枠の予算執行。 いずれも、風が吹いて「もうかる」先は、軍産複合体のもう一翼、米軍事ビジネスに突入される流れでした。
そこにシンガポールのが、日本の安保政策に託された日本人の「命と暮らし」が次第に、米国の掌中に握られないことへの疑いです。 しかも、その政策決定に主権者の民意は反映されず、政治への疑念は極まりました。
疑わしい風にも乗って、今だからこそ米国要請の軍拡。が民主政治の常道です。
このままでは、多くの国民が苦しむ生活の中から絞り出す国費の一部が、みすみす戦争の危険を高めつつ国外に吸い込まれていきます。 「次代への責任」です。