自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件に関し、26日の衆院予算委員会では、立憲民主党の野田佳彦元首相が政権与党を率いた自らの経験を踏まえ、岸田文雄首相に「あなたが政治改革の障害になっている」と迫った。2人は政治改革が最大の争点だった1993年衆院選で初当選した「同期」。野田氏は、自民党総裁である首相が事件の真相究明や再発防止に指導力を発揮していないと指弾したが、首相は論点をずらすなど曖昧な答弁に終始した。(小椋由紀子)
◆「派閥離脱もパーティー自粛も守らなかった」
野田氏はまず、89年の自民党の政治改革大綱が党役員や閣僚の在任中の派閥離脱を掲げていることを取り上げて、岸田派会長を続けてきた首相に「ずっと派閥を離脱しなかったのはなぜか」と派閥に固執した理由をただした。だが、首相は「派閥が人事やお金と切り離されなかったことの表れであり、反省しなければならない」と正面から答えようとしなかった。
野田氏は続けて、政務三役を対象に2001年に定められた「大臣規範」が大規模パーティーの自粛を求めていると指摘。その上で「22年に7回もパーティーを開き、売り上げが1億5510万円、利益は1億3609万円。首相自らが大綱を破り大臣規範を守らなかった」と畳みかけた。
◆「異常だ。ここまでお金集めにエネルギーを割くとは」
首相は「首相就任以前から続けてきた勉強会。国民の疑惑を招きかねないということには当たらない」と反論。野田氏は「私は金欠だったが、首相になったからといってパーティーをやろうとは思わなかった。異常だ。ここまでお金を集めることに心を砕き、エネルギーを割くのか。そんな心の余裕があるのか。不思議でしょうがない」と痛烈に皮肉った。
22年6月に広島市であった首相の就任祝賀会も追及。主催が任意団体なので政治資金収支報告書に記載していないと繰り返す首相に対し、受付や経理を首相の事務所が担い、任意団体の代表は首相の後援会長が務めていたことから「脱法パーティーではないか」と問いただした。
◆政治改革どころか「抜け穴づくりの先頭」
それでも、首相は「当初、余剰金の取り扱いも決まっておらず、実質的にも政治資金パーティーではない」と問題ないとの認識を強調。野田氏は「首相が代表の政治団体に320万円の寄付があった。政治改革の先頭に立つ人がなぜ抜け穴作りの先頭に立つのか」と対応に疑問を呈した。
裏金事件に関しては「裏金議員に納税義務を果たすよう指示すべきではないか」と提起。再発防止策についても各党が改革案を出しているのに「自民の案がない。議論が進まないのは自民のせい」と批判した。
さらに「政治改革大綱や大臣規範を守らない、政治資金規正法も守ろうとしない人が政治改革の先頭に立てるのか。むしろ後退させてきたのではないか」と政治姿勢を厳しく問うたが、首相からは最後まで具体的な答弁は聞かれなかった。