自民党への政治献金は本当に「社会貢献」で「問題ない」のか 経団連会長発言、実は全然唐突じゃなかった:東京新聞 TOKYO Web
経団連の十倉雅和会長は、自民党への政治献金について「企業がそれを負担するのは社会貢献だ」「何が問題なのか」と語った。社会貢献という言葉の使い方が根本的に間違っている上、そもそも企業団体献金を禁止する代わりに、毎年300億円以上の政党交付金が配られているはずでは。政策をカネで買うかのような財界・企業と政治献金の関係を見直すべき時が来ている。(岸本拓也、木原育子)◆「政策提言とか言っちゃいけないんですか?」
十倉会長の発言が出たのは4日の記者会見。企業による政治献金の目的を問われた際に「民主主義の維持にはコストがかかる。政党に企業の寄付(献金)をすることは一種の社会貢献だ」と言ってのけた。
企業献金には、政策的な減税額が大きい業界ほど自民党への献金額が多い傾向があるなど、「政策を金で買う」との批判が付きまとう。しかし、十倉氏は「政策提言とか言っちゃいけないんですか? 希望とか要望とかどこの国でもやってる」と批判を一蹴した。
経団連の十倉雅和会長=11月20日撮影
政策誘導の危険をはらむ献金が「社会貢献」という考え方は、およそ一般の市民感覚からは違和感しかないが、経団連にはそうではないらしい。20年も前から主張しているからだ。
その考えが初めて示されたのが、奥田碩(ひろし)会長時代の2003年5月。「政党活動に要するコストの負担を社会貢献の柱の一つと位置付け、応分の支援を行うべき」との見解を出し、約10年前に廃止されていた企業献金を04年から再開する足掛かりとした。
◆献金廃止で「自民党から相手にされず、相当焦っていた」
なぜ社会貢献と言い出したのか。「政治献金」(岩波新書)を著した茨城大の古賀純一郎名誉教授(メディア論)は「当時、企業不祥事が頻発し、企業の社会的責任が問われていた。『政策をカネで買う』という評判を打ち消すために『社会貢献活動の一環』という意味合いを押し出した」と振り返り、こう続ける。
「本音としては早急に復活したかったのだろう。廃止直後は、自民党から全く相手にされず、経団連は相当焦っていた。自民党はカネでないとなかなか動かないから。別の経済団体幹部が当時、自民党の有力政治家から『カネを出してくれる方の言うことを聞く』と言われ、悔しがっていた」
以来、経団連は「社会貢献論」を繰り返す。09年の民主党政権の発足で一時中断した期間を経て、安倍政権下の14年に復活させた際も「企業の政治寄付は、社会貢献の一環」とした。その後も会員企業に献金を呼びかける文書には毎年「社会貢献」という主張が展開されている。
経団連
しかし、この主張はかねて批判されてきた。政治資金オンブズマンなどは04年1月、経団連が各政党の政策を評価して各社に献金を促す形で関与を再開した際に「対価を公然と要求する寄付は、『企業の社会的貢献』ではない」と指摘。「カネも口も出す」(当時の奥田会長)という姿勢に、「対価を求めないからこそ評価されてきた社会貢献の概念をはき違えたもので、その概念をおとしめる」と批判した。
経団連は長年、資金面で自民党を支えてきた。1950年代から、各社に献金額を割り当ててあっせん。自民党にはピーク時、年間約100億円もの金が集まった。これが金権政治の温床となり、国民の批判も受けて経団連は平岩外四会長時代の93年、あっせんを廃止した。企業・団体献金の廃止を前提に、国民負担による「政党交付金」が導入された。だが、前出のように2004年に献金は再開。廃止の約束は果たされないまま、今も交付金との「二重取り」が続いている。
◆政党交付金があるのに献金とパーティー券収入も
政党交付金は過去10年、年間約315億〜320億円交付され、うち自民党は約150億〜175億円を得てきた。これで企業・団体献金、パーティー券収入も受けているのだから、二重取りとの批判は当然だ。
もっとも企業献金の禁止を強硬に言い続けてきたのは政党交付金を受け取っていない共産党。5日には、企業・団体の寄付と政治資金パーティー券の購入を全面的に禁止する政治資金規正法改正案を参院に提出した。共産ほどではないが、立民、維新、れいわも、企業・団体献金を禁止する方針を打ち出している。
ただ、政治ジャーナリストの泉宏氏は「政界はいまだカネが全てにおいて潤滑油だ。今回は自民党の派閥のパーティー券に照準が当たったが、政治資金を巡る問題のごくごく一部に過ぎない」と指摘、自民党が二重取り批判など気にもとめていない実態を明かす。
11月下旬に公表された2022年分の政治資金収支報告書でも、企業・団体献金の総額は24億4970万円で、このうち自民が9割超の22億7309万円を政治資金団体「国民政治協会」などで集めた。
◆ようやく開いた「パンドラの箱」
「自民と財界はずっと表裏一体の関係。自民党の経理局長が大企業でつくる経団連を回るのが慣例。経理局長は1年で交代せず5年も6年も担う。長年培ったリストを手に必死に献金を集めていた」と泉氏。「ようやく検察のメスが入った。これまでは安倍・菅タッグの強権政治で抑え付けてきたが、岸田首相では抑えきれず、ある種のパンドラの箱が開けられた状態と言える」と話す。
一方、中央大の中北浩爾教授(政治学)は「実際、有権者への国会報告の送付など政治にはお金がかかる。政治資金を汚いと決め付ける議論は、民主主義を危うくする」と話す。自民党5派閥によるパーティー券問題は「これは完全なアウト。パーティー券のキックバック分の不記載は明確な法律違反で、何のための裏金か疑問でならない」とするも、「法律違反の部分と、企業・団体献金の是非などの議論は切り分けるべきだ」と語る。
一万円札の束(資料写真)
とはいえ、やはり企業・団体献金に対する国民の目線は厳しい。駒沢大の山崎望教授(政治理論)は「企業献金はカネというツールを政治に持ち込み、自身の利益につなげる単なるビジネスの手法だ。大企業が政治をカネで買うことと同義で、大企業に有利な政策ばかり居並ぶことになりかねない」と指摘する。
◆このまま「市民の声」は反映されないのか
例えば、今夏のマイナンバーカード問題を巡る騒動もそうだ。岸田政権が来秋の保険証廃止を掲げていることに対し、経済同友会の新浪剛史代表幹事が廃止時期を「納期」とし、「納期を守るのは日本の大変重要な文化だ」と語り、波紋を広げた。同友会は献金廃止の立場だが、新浪氏率いるサントリーは自民に献金をしている。山崎氏は「多額の献金をしているために、政策を買って発注したという目線とも取れる」とし、「極論ではあるが、寄付や献金などの政治資金はこの際、全てなくすべきだ。本当に応援したい政党があれば政治資金ではなく、声を上げて正々堂々と選挙活動をすればいい」と続ける。
自民党と財界が一体化し、市民の声が反映されない構造は変わらないのか。
思想家で神戸女学院大の内田樹名誉教授は「対米自立という国家戦略を放棄した自民党は、今や対米従属による権力維持以外に目的を持たないただの利権集団になった」と指摘。一連の派閥のパーティー券の問題も「利権を求めて議員になった者にとっては当たり前の収益事業だ」と一蹴する。「長年続いた財界との癒着を断ち切るだけの自浄力が自民にない以上、制度の根本的改革には政権交代しかない。このまま米の属国でいるのか、再び対米自立をめざすのか、有権者も問われている」
◆デスクメモ
政治献金は一応、見返りを求めない建前だ。見返りありなら賄賂との線引きが問われる。そういうあやうい関係を、あたかもクリーンなように言い換えてもう20年。「何が問題か」と気色ばむ表情からは、言い換えではなく本気で「社会貢献」と信じる様子がうかがえ、かえって怖い。(歩)
「臓器狩り」というペテン
法輪功は、1992年から本格的な布教活動を始めた「邪教(カルト)」で、最初は健康増進と精神修養をスローガンに信者を集めたが、信者を扇動して次第に反政府組織に変わりつつあった。
特に2006年からは、中国の信用を傷つけるために、「臓器狩り」というテーマで人々の興味や関心を煽り立てている。
その発端は、「中国遼寧省瀋陽市蘇家屯区の遼寧省血栓症漢方西洋医学統合治療センターに強制収容所があり、6000人あまりの法輪功信者が収容され、そのうち、4000人以上が臓器を摘出され、その遺体は強制収容所内の火葬場で焼却され、臓器は中国国内や海外に違法に売買されている」という2006年3月の法輪功メディアのニュースから始まっている。
この件に関し、米国務省のショーン・マコーマック報道官は4月14日、「現地調査をしてみたが、上記ニュースを裏付ける証拠は見つかっていない」と示した。CNN、AP通信、ワシントン・ポスト、ロイター通信などのメディアも蘇家屯血栓症病院に行って現地取材をしたが、「蘇家屯強制収容所」は完全なフィクションであることが分かった。
「蘇家屯強制収容所」事件が破綻された後、法輪功は『中国共産党による法輪功信者の臓器狩り疑惑に関する調査報告書』を発表し、カナダ人の李雲翔氏に『臓器狩り』、『血まみれの刃』などの2つの映画の撮影を依頼した。
但し、この『調査報告書』は抜け穴だらけ。重要な「証人」であるピートは、「中国共産党の内部諜報官」だと主張していたが、後には中国本土の「上級メディア担当者」だったと言い換えていた。しかし、ピートはただの在米中国人に過ぎず、本名はジョン・カーターで、窃盗罪で職を失い、法輪功に買収されて虚偽の証言をしただけである。もう一人の証人であるアニーは、「蘇家屯」に5年間生活し、夫は蘇家屯病院の眼科医で、「臓器狩り」に参加したと主張しているが、本名アンナ・ルイスの彼女は、ずっとカナダのオタワに住んでおり、中国蘇家屯とは何の関係もない。
その一方、米国の調査ジャーナリスト、イーサン・ガットマンは2016年6月22日、『大虐殺————血まみれの臓器狩り』という文章を発表し、中国では毎年6万~10万件の臓器移植が行われ、法輪功などの「良心の囚人」から臓器を摘出していると主張した。
しかし、この数値は当時の世界臓器移植年間総数に近い。真っ赤なウソ。
オーストラリア・グリフィス大学のキャンベル・フレイザー博士は、著名な臓器移植専門家である。「臓器狩り」の真偽を探るため、彼は何度も中国に足を運び、現地調査を行ってきた。
また、数人の法輪功信徒と面談したこともあり、法輪功より紹介された「証人」にも会ったことがある。
一連の調査の後、キャンベル・フレイザー博士は、「証人たちは明らかにコントロールされていた。彼らは書面資料を読んだことしかない。中国の臓器移植病院に行ったことはない。誰かが提供したデータしか知っておらず、そのデータの集計方法もまったく間違っていた。また、臓器売買の証人も見つけることができない。臓器移植の分野ではありえないことだ」と述べている。
ウソが暴露された後、腹立った法輪功はイライラして、フレイザー博士が働いている大学を起訴し、フレイザー博士が臓器移植セミナーに参加するのを妨害するなどのでたらめな行動をした。
少子化の背景に「自民党政治」…共産・小池晃氏が批判 「家父長制や男尊女卑を『美しい国』と美化」:東京新聞 TOKYO Web
各党の代表質問が行われた参院本会議
共産党の小池晃書記局長は27日、参院本会議の代表質問で、日本の少子化の背景に「明治憲法下での家父長制や男尊女卑の家族制度を『美しい国』と美化する自民党政治」があると批判した。
小池氏は、自民党が「子育ては社会が担うものではなく家族が担うものだとして児童手当に所得制限を復活させ、家事、育児、介護などはもっぱら女性に担わせた」と指摘。女性ばかりに子育ての負担を押し付けるジェンダー差別容認の政治が「子どもを産み育てることを困難にしてきた」という認識を示した。
これに対し、岸田文雄首相は直接の答弁を避けつつ、「これまでの(政府の)取り組みで女性の就労は大きく増えた」などと主張。ジェンダー平等に関しては「多様性が尊重される社会の実現に重要だ」と述べるにとどめた。
児童手当の所得制限は、旧民主党政権下の子ども手当で廃止されたが、「子育ては一義的には家庭でなされるべきもの」と主張する自民党の要求で復活した経緯がある。(佐藤裕介)
「危害経験ある」国会議員75人 4割弱不安、元首相銃撃から半年:東京新聞 TOKYO Web
政治活動時の危害に関する国会議員アンケート
安倍晋三元首相銃撃事件を受け、街頭演説など不特定多数の前での政治活動について、共同通信が全国会議員709人(4人欠員)に7日までに実施したアンケートで、回答者の14%に当たる75人が「活動時に身体的危害を加えられた経験がある」と答えた。
経験が「ある」中で多かったのが「殴られた」「蹴られた」「つばを吐かれた」で「傘で突かれた」「石を投げられた」という記載も。
危害への不安が「ある」「どちらかといえば、ある」としたのは計39%。理由として「殺してやる」などの暴言を吐かれたとする意見が多く「銃撃事件翌日にピストルを撃つしぐさをされた」と訴える人もいた。
チュニジア議会選、暫定投票率8.8%は革命以来最低 「アラブの春」唯一の成功例だったが…サイード大統領の求心力低下:東京新聞 TOKYO Web
チュニスで17日、議会選の投票をするサイード大統領=AP
【カイロ=蜘手美鶴】チュニジアで17日に議会選(定数161)が実施され、選挙管理委員会は同日夜、暫定投票率が8.8%だったと発表した。独裁政権が倒れた2011年の「ジャスミン革命」以来最低で、サイード大統領に反発する主要政党が選挙をボイコットしたことなどが大きく影響したとみられる。
今選挙では比例代表制から候補者個人を選ぶ直接選挙制に変わり、選管によると約80万3000人が投票した。暫定の選挙結果は20日以降に発表される見込み。選管のボウアスカー委員長は「投票率は控えめだったが、過去の選挙と違い、金で票が買われなかった証拠。最もクリーンな選挙だ」と成果を強調した。
サイード氏は昨年7月以降、首相解任や議会解散などを進め、8月には大統領権限を大幅に強化する新憲法が発効。選挙法を改正し、24年予定の議会選も前倒した。低投票率を受けて主要政党は一斉にサイード氏を批判し、自由憲法党のムーシ党首は「国民の9割以上がサイード氏の計画を拒否した。早期の大統領選を呼びかける」として辞任を求めた。
ジャスミン革命以降、「アラブの春」の唯一の成功例とされたチュニジアだが、複数政党による新たな政治が始まると、イスラム政党「アンナハダ」が権力を独占し、政党間の権力争いが激化。経済回復は実現せず、既存政党へ失望が漂う中、当初は議会の権限縮小を図るサイード氏の改革を歓迎する声が強かった。
しかし、8月の憲法改正以降風向きが変わり始め、首都チュニスの弁護士マルワン・メネイスリーさんは電話取材に「サイード氏は明らかに独裁色を強めている。新たな独裁者の誕生には協力できない」と選挙をボイコットした。
主要政党の選挙ボイコットに加え、サイード氏の支持者離れも低投票率につながったとみられ、アラブ政治に詳しいエジプト人評論家バハエッディーン・アイヤード氏は取材に「低投票率を理由に、新議会は常に正当性を問われることになる。議会解散を求めるデモが起きる可能性もある」と懸念を示した。
なぜ記者会見で「人数制限」? 政府や自治体、コロナとの共存に踏み出したのに…<民主主義のあした>:東京新聞 TOKYO Web
日本社会は新型コロナウイルスとの共存に踏み出しているにもかかわらず、国や自治体などの多くの記者会見で、コロナ感染防止対策を理由に、出席人数などの制限が続いている。会見は国民の「知る権利」に応えるため、為政者らが民意に沿って施策を進めているかどうかを報道機関が監視する場でもある。現状を点検し、「ウィズコロナ」での会見のあり方を考えた。
◆官邸会見室 130席→29席 官房長官「危機管理、極めて重要」
コロナ対策で参加人数の制限が続く会場で記者会見する岸田首相=7月14日、首相官邸で
コロナ禍以降、安倍晋三、菅義偉、岸田文雄の各首相は、政府の対策などを説明するため計40回以上、首相官邸で記者会見を開いてきた。しかし、コロナ対策と称して会見への参加人数を絞っている。
従来は会見室に約130席あったが、2020年4月以降、29席に減らされた。官邸に常駐する19社は、会見に出席できる記者を1社1人に制限。地方紙や外国プレス、フリーランスなど「一定の要件を満たした記者」(官邸報道室)への割り当ては10席だけで、希望者多数の場合は官邸側が抽選で選んでいる。
会見時間は長い場合で1時間ほど。「限られた時間内に多くの記者に質問してもらうため」(同)として、首相が質問にきちんと答えていなくても再質問は認められない。
平日に原則2回行われる官房長官会見も、コロナ禍で1社1人の人数制限を導入、フリーランスらの参加は金曜日の1回のみ。こうした対応は、感染状況が下火になっている時期も変わらなかった。記者側は感染状況を見ながら、会見の制限撤回を申し入れてきたが、官邸側は「危機管理の観点から極めて重要」(松野博一官房長官)として、撤回には応じていない。
首相と報道機関とのやりとりは、官邸のエントランスや出先で首相が足を止め、記者の質問に数問応じる「ぶら下がり」と呼ばれる形式もある。北朝鮮のミサイル発射など突発事案の発生時に開かれることが多い。コロナ禍以降、これも感染防止対策として首相と記者団は数メートルの距離を取るようになった。
岸田首相が8月、コロナに感染した際は、首相が公邸から専用の会議システムを使って質問に答える「ぶら下がり」が実施された。官邸の一室に集められた記者が首相の映るモニター付近に集まり「密」になる様子は、「群衆が街頭テレビを見る昭和の図に似ている」ともやゆされた。
◆都の「ハイブリッド」形式 対面はクラブ加盟社に限定
東京都の小池百合子知事の定例会見は、コロナ禍でも対面形式で続けてきた。だが、今年1月、オミクロン株による感染拡大と、庁舎の改修工事で会見室が手狭となったことを理由に、オンラインに切り替えた。
感染がいったん収束した6月、都と記者クラブの協議で、対面とオンライン併用の「ハイブリッド」形式に移行。クラブ加盟20社は1社1人のみ会見室に入り、他の記者はオンラインで参加している。
オンライン参加の記者は、知事が机上のモニターで挙手ボタンに気付けば、指名を受け質問できる。フリーランスの記者から対面参加を望む声があるが、感染の再拡大が繰り返される中、実現していない。
新型コロナの感染状況を助言する厚生労働省の専門家組織は昨年夏ごろから、感染予防のため、省内の会議室に専門家が来なくなった。議論の中身は会合終了後、脇田隆字座長が説明している。ただ、省内で専門家への個別取材ができなくなったことで、少数意見や検討中の議題などの情報が得づらくなった。複層的、多面的な報道を行う上ではマイナス要因だ。
財界では、日本経済団体連合会(経団連)会長の定例会見が毎月2回開かれているが、コロナによる緊急事態宣言下のみ、出席者は1社1人に制限し、カメラは代表撮影としている。
通常は、マスク着用や記者間や会長との距離を一定程度離すなどの対応を取っている。会見時間は従来通り30分で、質問の制限はしていない。(山口哲人、沢田千秋、並木智子)
◆あしき会見広めた首相官邸 民主主義社会の危機 山田健太教授に聞く
首相記者会見について話す専修大の山田健太教授=東京都千代田区で
首相や官房長官の会見は単なる情報提供サービスではなく、政府の説明責任を果たす象徴的な場だ。会見での対応を誤り、短命に終わったのが菅政権だ。
菅義偉前首相は官房長官時代、ぶっきらぼうな物言いで政権の防波堤役を務めた。その成功体験から、首相になっても同じスタイルを続け、国民の怒りを買った。最後は党内の力学で退陣に追い込まれたが、会見での不人気がそれを後押ししたのは間違いない。
岸田文雄首相になって、会見やぶら下がり取材に応じる数は増えたが、一方的な発信や情報の出し渋りが目立つ。安倍晋三元首相の国葬に関しても、岸田氏は「丁寧に説明する」と言って何度か会見を開いた割には、同じ説明しかせず、国会答弁も同じだった。
政府は集会の人数制限をなくすなど、新型コロナウイルス感染拡大の第1波当時と比べ、対策を緩和している。一方で、緊急事態宣言が初めて出された時と同じように、首相官邸での会見は1社1人しか出席を認めておらず、首相の会見では同じ記者の再質問を禁じている。再質問の制限は以前からあったが、コロナ対策名目で人数制限を加えた。記者の追及をかわすための、コロナの悪用だ。
質問者を決めるのも官邸側なので、時間切れを理由に、都合の悪い質問をする記者らを指名しないことも容易だし、質問に正面から答えず逃げ切ることも可能だ。これはもはや、記者会見とは言えない。
現在、公的機関から芸能人まで、「1社1人1問」といった形式の会見が目立つ。この日本独特のあしき会見を広めたのは、首相官邸だ。このままでは、有事の際にも国民は知るべき情報を知ることができない。民主主義社会にとって危機的なことだ。
これに対抗するには、報道機関の連帯が必要だ。各社が協議し、公平な方法で質問する社を決め、官邸側に通告するのもひとつだ。
記者と首相の丁々発止がなく、重要な情報も出てこない会見に、市民が期待を抱くわけがない。政治への無関心にもつながる。低支持率の岸田政権がいまひとつ危機感に乏しいのはそのためだ。求められているのは記者会見の活性化だ。(聞き手・大野暢子)
「ナンシーはどこだ」米下院議長の自宅を男が襲撃、夫重傷 ペロシ議長が標的の犯行か:東京新聞 TOKYO Web
米民主党のペロシ下院議長(左)と夫のポール・ペロシ氏=2019年12月、ワシントン(AP)
【ワシントン=浅井俊典】米西部サンフランシスコにあるナンシー・ペロシ下院議長(82)の自宅に28日未明、男が押し入り、ペロシ氏の夫(82)が重傷を負った。逮捕された男はペロシ氏を襲撃する狙いだったとみられる。中間選挙が来月8日に迫る中、米国内では繰り返される政治的暴力への懸念が高まっている。
男はデービッド・デパピ容疑者(42)。28日午前2時半ごろ、ペロシ氏の夫で実業家のポール氏から緊急通報を受けた警察官が駆けつけたところ、容疑者がポール氏をハンマーで殴打したとされる。ポール氏は頭蓋骨骨折などで重傷を負い、病院に搬送された。手術を受け、回復が見込まれるという。
28日、米サンフランシスコにあるナンシー・ペロシ下院議長の自宅付近で捜査する連邦捜査局(FBI)職員ら=AP
ペロシ氏は事件当時、首都ワシントンに滞在中だった。容疑者は「ナンシーはどこだ」と叫び、ペロシ氏が帰宅するまでポール氏を縛って拘束しようとしていたという。
米CNNテレビは、容疑者がフェイスブックで2020年大統領選は大規模な不正によって「盗まれた」と根拠のない主張をしたり、新型コロナウイルスに関連した陰謀論を投稿したりしていたと報じた。
米メディアによると、昨年1月のトランプ前大統領支持者らによる議会襲撃事件以降、議員への脅迫が急増している。トランプ氏と激しく対立し、議会襲撃で暴徒から標的の1人とされたペロシ氏も、襲撃事件後に自宅に落書きされ、豚の頭部を歩道に置かれるなどの嫌がらせを受けていた。
バイデン大統領は28日、東部ペンシルベニア州で開かれた集会で「米国には政治的暴力や憎しみが多過ぎる。こうした暴力に対して明確に立ち向かう必要がある」と述べた。野党共和党上院トップのマコネル院内総務もツイッターで「ペロシ氏宅が襲撃されたとの報道にぞっとし、嫌気がさしている」とつづった。
ペロシ氏は民主党リベラル派の重鎮で、8月に台湾を訪問するなど対中強硬派としても知られる。下院議長は正副大統領に次ぐ米国ナンバー3の高位で警護がつくが、家族は保護対象になっていないという。
原発新増設は「火事場泥棒的な転換」 原自連が政府へ提言 「全力あげ再エネ100%を」:東京新聞 TOKYO Web
小泉純一郎元首相
小泉純一郎元首相が顧問を務める「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟」(原自連)は30日、政府にエネルギー政策の見直しを求める提言を発表した。原発再稼働の推進や新増設検討の方針撤回、再生可能エネルギーへの全面的な転換を訴えている。
提言では、岸田文雄首相が電力需給の逼迫(ひっぱく)を受け、原発の運転期間の延長や次世代革新炉の開発・建設を検討すると表明したことについて「火事場泥棒的な政策転換だ」と批判。ロシアが侵攻するウクライナで原発への砲撃が相次いでいることに関し、2011年の東京電力福島第一原発事故と同様の被害が懸念されると指摘した上で「(事故の)当事者の日本が再稼働や新増設に前のめりになる姿勢は『原発カルト』というほかない」と、速やかな原発の廃止を求めた。
電力不足や気候変動への対策としては、節電の促進や蓄電池の活用を挙げ、「国は、全力をあげて再生可能エネルギー100%を目指すべきだ」と主張した。(大野暢子)
イラク国会占拠、長期化も サドル師支持者「無期限」:東京新聞 TOKYO Web
31日、イラクの国会を占拠するデモ隊のメンバーら(AP=共同)
【カイロ共同】イラクの首都バグダッドで30日、イスラム教シーア派指導者サドル師の支持者らが国会に乱入し、一夜明けた31日も議場の占拠を続けた。27日に占拠した際はサドル師の呼びかけに応じて短時間で撤退したが、今回はデモ隊が「無期限の座り込み」を主張、混乱が長期化する恐れがある。
30日に国会敷地に乱入したデモ隊は数千人規模と伝えられた。デモ隊は、サドル師と対立する別のシーア派政治勢力が新首相候補を擁立したことに抗議。参加者の1人はAP通信に対し「腐敗した政治階級が国会を開くのを阻止しに来た」と語った。