東京都知事選挙、主要候補の公約比較 = 候補者たちは何を訴えている? | The HEADLINE
この記事のまとめ
💡 東京都知事選挙、主要候補の公約比較⏩ 過去最多56名が立候補⏩ 経済・雇用、少子化・子育て・教育、行財政改革・DX、インフラ・防災など8項目で比較⏩ 現職の小池百合子に蓮舫、石丸伸二、田母神俊雄などが挑む構図、投開票は7月7日
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自民党がフリーなカネ「政策活動費」温存に一生懸命 独自の政治資金規正法改正案を提出 しっかり穴だらけ:東京新聞 TOKYO Web
自民党は17日、派閥の政治資金パーティー裏金事件を受けた政治資金規正法改正案を衆院に単独で提出した。焦点の一つである政策活動費の使途公開は項目単位にとどまるなど、支出の実態が見えない「ブラックボックス」は相変わらず。連立与党の公明党ですら共同提出を拒む異例の状況で、野党は「検討対象にも値しない」と一斉に批判。衆院の政治改革特別委員会で22日に審議入りするが、自民と他党の隔たりは大きく、協議の難航は避けられそうにない。(井上峻輔)
◆首相「実効性ある」 しかし自民党内にも疑問の声が
17日午後6時過ぎ、記者団の取材に応じる岸田文雄首相=首相官邸で、千葉一成撮影
岸田文雄首相は17日夕、官邸で記者団に「実効性のある再発防止策になった。政治改革特別委の議論に真摯(しんし)に対応し、政治の信頼回復につなげていきたい」と強調。自民の森山裕総務会長は「自民党が変わったと感じていただけるのではないか」と自画自賛した。
首相らは自民案に「実効性がある」と繰り返すが、実際には与党内にもそんな受け止めはほとんどない。象徴的なのが党から議員個人に支出される政策活動費の使途公開だ。
自民案では政党から50万円以上の支出を受けた議員は使途を政党に報告し、党の収支報告書に記載する。その内容は「組織活動費」「選挙関係費」など大まかな項目だけ。個別の日時や支出先は明らかにされず、領収書の添付も不要だ。
自民の二階俊博元幹事長は5年余りの幹事長在任中に約47億8000万円を受領していたが、使い道がはっきりせず、政治不信を招いた。自民案では、二階氏の時のようなチェックが及ばない資金が残ることになる。
首相は国会審議で詳細な使途の公開に慎重姿勢を示してきた。法案作成を担った鈴木馨祐衆院議員は台湾との議員外交まで持ち出して「果たしてそういったものを全てオープンにするべきなのか」と強弁する。
◆自民幹部「国民の理解をいただけるのでは」と期待
そんな対応に自民内からも「項目だけの公開では国民の理解が得られない」(閣僚経験者)と懸念の声が上がり、16日の党会合では政策活動費そのものの廃止を求める意見も浮上。中堅議員は「幹部は自由に使える金を手放したくないのだろう」と冷ややかだ。
自民党本部
共産党の小池晃書記局長は「大きなブラックボックスを小さなブラックボックスにするだけ」と批判。立憲民主党の泉健太代表は「これで透明性が高まったというのは大間違い」と突き放す。
パーティー券購入者名の公開基準では、公明や野党各党は現行の「20万円超」から通常の寄付と同等の「5万円超」への引き下げや、パーティーの廃止を主張するが、自民案は「10万円超」で透明性の確保で劣る。野党各党が求める企業・団体献金の廃止も盛り込まれなかった。
自民は他党より企業・団体献金への依存度が高く、その資金源を温存したいのが本音。森山氏は「10万円超に引き下げたのはかなりの決断だった。政治活動にはコストがかかるというのは国民の理解をいただけるのではないか」と述べた。
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◆落選した自民陣営が対立候補への寄付者に押しかけて…
自民党が単独で衆院に提出した政治資金規正法改正案は、政治資金パーティー券の購入者の公開基準については現行の「20万円超」から「10万円超」への引き下げにとどまる。自民は与党協議で「5万円超」からの公開を求めた公明党との合意を見送り、引き下げに強く抵抗する裏にはどんな事情があるのか。
ある若手議員は、自民が「10万円」のラインにかたくなにこだわった背景について「現行の20万から下げすぎることが問題。10万円くらい買う人は結構多い」と解説する。氏名や住所が公開される基準が10万円以下に広がれば、パーティー券の売り上げ減になるかもしれないという理屈だ。
また、議員によると、前回の2021年衆院選では九州地方のある選挙区で、落選した自民候補の陣営が当選した対立候補に寄付した人を割り出し、自宅や会社の事務所に押しかけて詰め寄る事態も起きたという。「立場上の制約はあるがこの人は応援したいという気持ちを否定することにもなりかねない」と寄付者が公開されることになる基準の引き下げに懸念を示す。
「そういう『寄付者つぶし』みたいなことがあると、政界を志そうという若い政治家が出にくくなる。多選の人が有利になって政治の新陳代謝が起きず、おごりや緩みのある政治になってしまう」と指摘する。(佐藤裕介)
政治資金規正法 1948年施行。民主政治の発達を目的に、政治家や政党の政治資金の収支公開や寄付などについて定める。収支報告書は政党や政党支部、政治家の資金管理団体、派閥や後援会などの政治団体が作成し、毎年公表する。リクルート事件(1988年発覚)を受けた1994年の改正で、政治家個人に対する企業・団体献金は禁じられたが、政党や、政治家が代表を務める支部は対象外とされ、抜け穴として残った。パーティー券の購入は寄付には当たらず、1回150万円まで可能。20万円を超える購入者の名前は公表される。
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逮捕者まで出て「カオスだった」 大学生が追いかけた衆院東京15区補選 いまの政治に希望は見えたのか:東京新聞 TOKYO Web
他陣営が演説中、電話ボックスに上り大音量で演説する「つばさの党」代表の黒川敦彦容疑者=4月16日、東京都江東区で
政治団体「つばさの党」による他陣営への演説妨害行為が、事件に発展した4月の衆院東京15区補欠選挙。自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件への怒りなどを背景に、与党候補が不在となり、投票率は過去最低を更新。国民の間に広がる「政治不信」を、象徴する選挙ともなった。与党の責任は大きいが、野党も批判の受け皿になりきれていない。同補選で、各候補の演説を聴いて回った大学生たちに、いまの政治はどう見えるか。(山田雄之、森本智之)
◆野党の見本市のような選挙
2019年以降、汚職事件や公職選挙法違反事件で、衆院議員や区長(いずれも辞職)が相次いで立件された江東区。加えて派閥の裏金事件による逆風のなかで、自民党は独自の候補を擁立できず、衆院東京15区補選は、野党や無所属など過去最多の9人が立つ混戦となった。
つばさの党の候補者らが他陣営を追いかけ、拡声器などを使って演説を聞き取れないようにするなどの行為も問題化。他陣営は演説を中止したり、日程の公表を控えたりするなどの対応を余儀なくされた。
他陣営の演説中に公衆電話ボックスの上から声を上げる根本良輔容疑者=4月16日、東京都江東区で
不祥事に起因する江東区内の選挙が相次いでいる。「政治に期待しても、何も変わらないと思っているかもしれない」。投開票前日の4月27日夜、女性候補の1人は街頭で政治不信に触れて「政治をあきらめないで」と有権者に訴えかけた。しかし、補選の投票率は、過去最低だった17年をさらに14.89ポイントも下回る40.70%にとどまった。
異例ずくめの補選を「野党の見本市のような選挙。学生が多くの候補者の話を聴ける機会になれば」と位置づけて、フィールド調査をしたのが、法政大大学院の白鳥浩教授(現代政治分析)のゼミだ。大学2年から院生まで十数人が参加し、告示日や選挙サンデー、最終日の演説を聴き、外交や憲法、消費税など各候補が重視する問題を演説時間から分析した。
◆陣営同士が争い、警察が介入「演説を聴きに来た有権者もいたのに…」
各候補の訴えや選挙は、学生たちにどのように映っただろうか。
3年白井大也さん(20)=横浜市=は選挙サンデーの4月21日、つばさの党の妨害の影響で、女性候補の事務所に演説場所を教えてもらえず困ったという。ようやく目当ての候補の選挙カーを見つけたと思ったら、つばさの党の関係者が大音量の罵声をスピーカーで流し始め、その場の演説も中止となった。
街頭演説会場を警備する多数の警察官=4月21日、東京都江東区で
「陣営や支援者同士で争いになり、警察も来てカオスだった。仕事がない日曜日だから、と演説を聴きに来た有権者もいたと思う。聴かせてあげたかった」と残念がる。選挙運動の最終日、有権者の声援を受けた男性候補が涙の演説を行い、「人柄と熱意に心打たれた場面もあった」という。
気になったのは、やはり自民の裏金問題だ。「税金の使われ方が分からないのは不満だし、クリーンな政治をやってもらいたい。でもどの野党に入れたとしても過半数は取れない。政治が変わらないなら投票行かなくていいや、と若者は思っちゃうんじゃないか」
衆院東京15区の補欠選挙が告示され、街頭演説に集まった人たち=4月16日、東京都江東区で
「もう少し具体的な政策を聴きたかった」と振り返るのは、3年佐川太郎さん(20)=八王子市。告示日と最終日に演説を聴いた女性候補は、政党の理念を説明する場面が多く目立ったという。「どのように政党の理念を実現するのか、候補者が考える方法が知りたかった」と話す。
政権交代を望む声が上がっていることには、少し懐疑的だ。「自民党が長年にわたり政権運営してきた。批判に慣れている野党がいきなり交代して、与党として新たな政策を考えていけるのか、不安はあります」
◆真剣に演説を聴いたら「好感を持てた候補も」
候補者4人の演説を聴いたという3年加藤巧真さん(21)=同=は「今回ほど真剣に、各候補の演説を聴いたことはなかった。好感が持てた人もいた」と明かし、ある男性候補を「自分が実現したい社会を、分かりやすい言葉で説明していた」と評価した。
補選の投票率は過去最低を更新したが、「国民の政治への関心が低い、とは言い切れないと思う。信頼できる候補を見つけられなかった有権者の中には、白票を投じるのではなく、選挙に行かないことで意思を示す人もいるはず」と話す。
指導した白鳥教授は「政治の閉塞(へいそく)感を表す選挙だった。ただ、政治家の演説をじかに聴くのは貴重な機会。民主主義の実践の現場を学ぶことができ、訴えを分析することで、冷静に候補の主張を受け止める目を養えたのでは」と述べた。
◆「全敗」でも政治不信に向き合わない自民
東京15区と同日行われた島根1区、長崎3区と合わせ衆院3補選は不戦敗を含め、自民の全敗となった。それにもかかわらず、自民の政治不信に向き合う姿勢は、疑問符が付く状況が選挙後も続いている。
「再発防止の話と、自民党の力をそぎたいという政局的な話がごっちゃになっている」。派閥の裏金事件を受けた政治資金規正法の改正を巡り、党政治刷新本部座長の鈴木馨祐衆院議員は12日のNHKの討論番組で、野党側の出席者をこう批判した。
記者団の取材に応じる岸田首相=17日、首相官邸で
企業・団体献金の廃止など、自民党に抜本的な改正案を求める野党への反論だが、裏金事件の真相究明や改革は重要課題だ。自民の責任者でありながら、野党による「政局」であると、問題をすり替えるような意見には、交流サイト(SNS)でも批判が相次いだ。
環境相との懇談で水俣病の被害者らが発言中にマイク音を切られた問題を巡っても、環境省は大臣の謝罪や、対応力を高めるタスクフォースの新設を余儀なくされた。岸田政権の看板の「聞く力」も問われている。
◆「政権を担えるのか」国民の支持取り込めぬ野党
時事通信の世論調査によると、自民党派閥の裏金が発覚した昨年12月の調査で、岸田政権の支持率は17.1%となり、2009年9月以来2割を下回った。その後も低迷し直近の5月は18.7%だった。
衆院本会議=4月25日
ただ、野党の支持率も低い水準にとどまっている。5月の調査で立憲民主が5.1%、日本維新の会が2.1%。その一方で「支持政党無し」は66.9%に達し、12年に自民党が政権復帰して以降、最も高くなった。政権与党から離れた国民の支持を、野党も取り込めていないのが現状だ。
明治大の井田正道教授(政治行動論)は「金権政治に対する不信があって与党は支持したくないが、野党は分散していて、自民の代わりに政権を担えるのか、その能力にも不信がある。その結果、増えているのが無党派層だ」とみる。今回の補選でも「自民党は嫌だ。でも野党にも入れる気にならない」という人が棄権に回り、低投票率になったと分析する。
◆与野党が競い合わなければ政治は良くならない
与党にも野党にも満足できず、政治から国民の関心が遠のいている。
中央大の山崎望教授(政治理論)は「政権はレームダック(死に体)で、本来は野党にとってはチャンスのはず」と指摘した上で、「最大野党の立民にしても、今の与党に代わる政権構想を打ち出せていない。自民に政治改革が期待できない以上、野党には、国民の不信不満をまとめあげて、対立軸を示してほしい」と注文する。
前述の白鳥教授も「いまの政治不信は与党の責任が大きい」とした上で「自民の1強多弱が問題の根源にある。国会に緊張感がないから、自民は政治と金の問題でも、抜本的な改革案を示さなくて済んでしまう。与野党が伯仲しなければ、政治は良くならない」と野党に奮起を促した。
◆デスクメモ
15区補選を追った大学生の中には、候補の事務所付近に張り込んで、演説を待ち続けた人もいるという。「大人として恥ずかしくないのかよ!」と、つばさの党の関係者が子どもに突っ込まれているニュース映像も見た。若い世代を落胆させるような選挙戦は、これっきりにしたい。(恭)
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投票は誰に?各候補者の考えは…東京15区補選 政治献金、憲法9条、原発、選択的夫婦別姓…アンケートしました:東京新聞 TOKYO Web
衆院3補欠選挙(28日投開票)の東京15区(江東区)では、新人と元職の計9人が立候補しています。それぞれの候補は「政治とカネ」や「原発」などの課題に対しどのような考えを持っているのでしょうか。アンケートへの回答を紹介します。(届け出順)※回答文は原則、表現を変えずに掲載しています。
◆質問ごとに候補者の回答を比較する<1>「政治の信頼回復どう訴える」「政治にカネ必要?」(このページ)<2>「企業・団体献金禁止に賛成?」「連座制導入に賛成?」<3>「憲法9条の改正どう考える」「原発への考えは」<4>「選択的夫婦別姓制度の導入は」「小池都政の評価は」◆候補者ごとに回答を読む(上から届出順)福永活也(ふくなが・かつや)さん(43)=諸派・新=弁護士乙武洋匡(おとたけ・ひろただ)さん(48)=無所属・新<推薦>国民民主、ファーストの会=ファーストの会副代表吉川里奈(よしかわ・りな)さん(36)=参政・新=看護師秋元司(あきもと・つかさ)さん(52)=無所属・元=元環境副大臣金沢結衣(かなざわ・ゆい)さん(33)=日本維新の会・新<推薦>教育無償化を実現する会=元江崎グリコ社員根本良輔(ねもと・りょうすけ)さん(29)=諸派・新=IT会社経営酒井菜摘(さかい・なつみ)さん(37)=立憲民主・新=元江東区議飯山陽(いいやま・あかり)さん(48)=諸派・新=麗沢大客員教授須藤元気(すどう・げんき)さん(46)=無所属・新=元総合格闘家<質問1>政治とカネを巡る事件が後を絶ちません。政治の信頼回復についてどう訴えますか。福永活也さん=諸派「NHKから国民を守る党」・新人 法制度として中長期的には、政治家も個人事業主として原則課税対象として経費支出は領収書等により疎明すべき。制度が整うまでは自主的に収支の内容や目的の明細を公表して国民の信頼に努めるべき。乙武洋匡さん=無所属・新人 政治資金規正法を改正し、政治とカネの問題を根本から決着。具体的には、政治資金収支報告書の虚偽記載への罰則強化、政治資金・政党助成金の監督をする第三者独立機関の設置、調査研究広報滞在費などの使途を公開。吉川里奈さん=参政党・新人 参政党は結党当初から党運営については党費や個人からの寄付等でまかなっています。既存政党にはなかったガラス張りでクリーンな資金運用を知っていただければ、有権者からの信頼は得られると考えています。秋元司さん=無所属・元職 情報をディスクローズして、常にガラス張りの状況を作り上げる体制を整備します。金沢結衣さん=日本維新の会・新人 今国会中に緊急に行うことは、政治資金規正法の罰則強化・連座制導入、パーティーの見直し、外部監査の徹底等の透明化を図る。さらに、納税者目線でのクリーンな政治の実現に向けての改革を継続する。根本良輔さん=諸派「つばさの党」・新人 統一教会という反日カルト宗教がバックにいる自民党が政権与党の時点で信頼回復もない。同じく政権与党の公明党も創価学会というカルト宗教が運営している。この時点で政治の信用回復なんてものはあり得ない。酒井菜摘さん=立憲民主党・新人 今の江東区や国会での政治とカネの問題は、すべて自民党によるもの。私たちが勝利することで、お金に汚い、古い自民党政治ときっぱり決別し、国民に信頼される、まっとうな政治を取り戻したい。飯山陽さん=諸派「日本保守党」・新人 今般の事件は氷山の一角である。政治資金規正法、公職選挙法など関連法の改正はもちろんのこと、議員の家業化、議員特権含め抜本的な制度見直しが必要。議員報酬の引き下げ、特権、世襲をなくす法改正を訴える。須藤元気さん=無所属・新人 収支報告書漏れ分は政治家個人の所得として課税対象とし、申告漏れに対しては追徴課税を納めて頂くべきであり、悪質な場合は国税局が所得隠しの容疑として捜査すれば政治の信頼は取り戻せる。<質問2>政治にお金は必要ですか。(1)大いに必要 (2)ある程度必要 (3)あまり必要ない (4)まったく必要ない福永活也さん=諸派「NHKから国民を守る党」・新人...
安倍派5人衆の世耕弘成氏、「裏金」を高級クッキー店でたびたび支出…食べたのは誰? 「一見さんお断り」で入手困難:東京新聞 TOKYO Web
自民党安倍派の実力者「5人衆」の一人で、前参院幹事長の世耕弘成(ひろしげ)氏の政治団体は、派閥からキックバック(還流)されたパーティー券収入から頻繁に「贈答品」を購入していた。
中でも目を引くのが購入先だ。訂正した収支報告書には、一見さんお断りの老舗洋菓子店の名前がずらり。
この店の看板商品という高級クッキーを巡っては、世耕氏に新たな疑惑も持ち上がっている。(加藤豊大、佐藤裕介)
自民党の世耕弘成前参院幹事長
◆裏金から「贈答品代」毎月出費
自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件で、世耕氏の場合、収支報告書に不記載だった還流分は、2018年からの5年間で総額1542万円に上った。
2月末に訂正した世耕氏の資金管理団体「紀成会」の2021~22年分の収支報告書には、還流分の使い道として「贈答品代」の記載が追記されていた。
贈答品の購入先として頻繁に登場していたのが、創業150年になる東京都内の老舗洋菓子店だ。
2021年は6件で計12万6000円。2022年になると、毎月欠かすことなく月1回の頻度で購入しており、総額は25万2000円に上っていた。
世耕氏は、裏金事件を受けた1月の記者会見で、「現状把握できている支出はすべて政治活動費で、不正な目的や私的な目的でなされた支出は一切確認されていない」と説明していた。
「政治活動のために使った」という世耕氏。では、いったい、どんな人に、何のために、老舗洋菓子店の商品を贈っていたのだろうか。
世耕氏の事務所に問い合わせたが、「お答えしない」という。
裏金事件を受け、訂正した世耕氏の資金管理団体「紀成会」の収支報告書。「贈答品代」として老舗洋菓子店に毎月支出した記載がある
◆注文しても手に入るのは1年先
世耕氏が、派閥から還流された金で購入していた老舗洋菓子店は、ただの店ではない。
SNS上で「1年先からしか予約が取れない」「一見さんお断りの超高級クッキー」などと取り上げられている人気店だ。
店に取材すると、創業は1874(明治7)年。明治政府が建てた迎賓館「鹿鳴館」の舞踏会にも、店のお菓子が提供されたという。
看板商品のクッキー缶は、サイズに応じて8000~3万4000円。店の担当者は「今注文を受けても、提供できるのは1年先」と話す。
注文するにも会員の紹介が必要だ。ただ、SNSの投稿で注目を浴び、会員数が近年急増。注文が殺到したため2022年6月から新規の会員登録を停止しているという。
店の担当者は「会員数は非公開」とし、「立場があるからお譲りするわけでもない。会員はさまざまな人がいる。政治家もいるが、全体の数からいうと多いわけではない」と話す。
世耕氏がよく利用しているのか尋ねると「個人情報に関わることなので言えない」とのことだった。
◆ロッキード事件でアリバイに
ロッキード事件で逮捕され、東京地検を出る田中角栄元首相=1976年7月、東京・霞が関で
この老舗洋菓子店は、1976年に発覚した「政治とカネ」を巡るロッキード事件にも登場する。
検察が押収した田中角栄元首相の秘書の手帳に、店の名前が書かれていたのだ。
店の付近で現金授受があったとにらみ、検察側が追及すると、秘書は「店に菓子を引き取りにいった」として現金授受を否定した。
ところが、手帳に記された日は店の休業日だったことが、法廷に呼ばれた店の経営者の証言で判明。秘書のアリバイが崩れることになった。
◆地元支援者「世耕さんからもらった」
裏金から支出した時期とは異なるが、2023年に世耕氏から直接、この老舗洋菓子店の高級クッキーをもらったという人物が現れた。自身のブログに赤裸々につづっていた。
この人物は、世耕氏の資金管理団体「紀成会」の収支報告書によると、世耕氏の有力な地元支援者のようだ。世耕氏の選挙区である和歌山市在住。「会社相談役」という肩書きで、2020~22年の3年間に総額236万円を献金していた。
この地元支援者は、ブログで自身を和歌山市内の木材加工会社の相談役と紹介している。
ブログでは、2023年11月ごろ、東京都内で世耕氏と会食。世耕氏と別れた後、「世耕さんからもらったクッキー缶を片手に」銀座のクラブに立ち寄ったとしている。
◆「クッキー缶のおかげでヒーロー」
クラブでクッキーを振る舞うと、「ホステスのみんなからは今まで聞いたことのないような歓声が」と明かし、「クッキー缶のおかげで今夜はヒーロー。世耕先生、ありがとう」と、世耕氏への感謝の言葉をつづっていた。
世耕氏から老舗洋菓子店のクッキー缶をもらったことをつづった地元支援者のブログ(一部画像処理)
木材加工会社の関係者は、この地元支援者について、本紙の取材に「社内では相談役と呼んでいる」と明かした上で、ブログの執筆者であることも認めた。ただし、ブログの内容については「本人が出張中で分からない」とのことだった。
公職選挙法では、政治家が選挙区内の人に金品を贈ることを禁じている。
世耕氏の事務所に、ブログに書かれた内容が事実か尋ねたが、「お答えしない」とのことだった。
◆世耕氏「会食費の負担という思いで」
世耕氏は8日になって、国会内で報道陣の取材に応じた。
世耕氏は、高級クッキーを贈った地元支援者を「個人的にお付き合いのある経営者」と明かした。
クッキーを贈った経緯については「こちら側から応分の(会食)費用負担をお願いしたが固辞された。せめて一部の負担をという思いで(クッキー)をお渡しした」と説明。「いわゆる公選法違反が禁じる寄付には当たらない」と違法性を否定した。
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野田佳彦元首相に「あなたが政治改革の障害」とこき下ろされ… 岸田文雄首相は何一つまともに答えられず:東京新聞 TOKYO Web
自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件に関し、26日の衆院予算委員会では、立憲民主党の野田佳彦元首相が政権与党を率いた自らの経験を踏まえ、岸田文雄首相に「あなたが政治改革の障害になっている」と迫った。2人は政治改革が最大の争点だった1993年衆院選で初当選した「同期」。野田氏は、自民党総裁である首相が事件の真相究明や再発防止に指導力を発揮していないと指弾したが、首相は論点をずらすなど曖昧な答弁に終始した。(小椋由紀子)
◆「派閥離脱もパーティー自粛も守らなかった」
26日、衆院予算委で質問する立憲民主党の野田佳彦元首相
野田氏はまず、89年の自民党の政治改革大綱が党役員や閣僚の在任中の派閥離脱を掲げていることを取り上げて、岸田派会長を続けてきた首相に「ずっと派閥を離脱しなかったのはなぜか」と派閥に固執した理由をただした。だが、首相は「派閥が人事やお金と切り離されなかったことの表れであり、反省しなければならない」と正面から答えようとしなかった。
野田氏は続けて、政務三役を対象に2001年に定められた「大臣規範」が大規模パーティーの自粛を求めていると指摘。その上で「22年に7回もパーティーを開き、売り上げが1億5510万円、利益は1億3609万円。首相自らが大綱を破り大臣規範を守らなかった」と畳みかけた。
◆「異常だ。ここまでお金集めにエネルギーを割くとは」
衆院予算委で答弁する岸田文雄首相
首相は「首相就任以前から続けてきた勉強会。国民の疑惑を招きかねないということには当たらない」と反論。野田氏は「私は金欠だったが、首相になったからといってパーティーをやろうとは思わなかった。異常だ。ここまでお金を集めることに心を砕き、エネルギーを割くのか。そんな心の余裕があるのか。不思議でしょうがない」と痛烈に皮肉った。
22年6月に広島市であった首相の就任祝賀会も追及。主催が任意団体なので政治資金収支報告書に記載していないと繰り返す首相に対し、受付や経理を首相の事務所が担い、任意団体の代表は首相の後援会長が務めていたことから「脱法パーティーではないか」と問いただした。
◆政治改革どころか「抜け穴づくりの先頭」
それでも、首相は「当初、余剰金の取り扱いも決まっておらず、実質的にも政治資金パーティーではない」と問題ないとの認識を強調。野田氏は「首相が代表の政治団体に320万円の寄付があった。政治改革の先頭に立つ人がなぜ抜け穴作りの先頭に立つのか」と対応に疑問を呈した。
裏金事件に関しては「裏金議員に納税義務を果たすよう指示すべきではないか」と提起。再発防止策についても各党が改革案を出しているのに「自民の案がない。議論が進まないのは自民のせい」と批判した。
さらに「政治改革大綱や大臣規範を守らない、政治資金規正法も守ろうとしない人が政治改革の先頭に立てるのか。むしろ後退させてきたのではないか」と政治姿勢を厳しく問うたが、首相からは最後まで具体的な答弁は聞かれなかった。
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「腐敗ばかりの政治は要らない」 国会前で「#さようなら自民党政治」デモ:東京新聞 TOKYO Web
国会前で自民党政治への抗議をする人たち
自民党派閥の政治資金パーティーの裏金づくりや防衛費の増額などを問題視し、岸田政権の退陣を求めるデモが22日夜、東京・永田町の国会前であった。参加者は「#さようなら自民党政治」と書いた横断幕を掲げ、国会に向かって「腐敗ばかりの政治は要らない」「裏金議員は説明を」と声を上げた。
登壇した法政大の山口二郎教授(政治学)は「大事な予算審議の時期に、裏金問題が最大の政治問題になってしまっている。ひとえに自民党のせいだ」と指摘。「日本の政治に常識を取り戻すため、政権交代に向けて声を上げていこう」と呼びかけた。友人と参加した都内の女子大学生(20)=文京区=は「自民党は裏金問題で政治を滞らせ、機能不全に陥らせている」と憤った。
公正な社会や政治を目指して行動する10~40代の市民有志を中心とするグループ「WE WANT OUR FUTURE」が主催。デモの模様はユーチューブでも配信された。(三宅千智)
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「東京の政治家が想像する以上に自民党への逆風が吹き荒れている」辛坊治郎が指摘 ~前橋・京都市長選の結果巡り – ニッポン放送 NEWS ONLINE
キャスターの辛坊治郎が2月5日、自身がパーソナリティを務めるニッポン放送「辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!」に出演。4日、投開票が行われた前橋市長選、京都市長選の結果を巡り、「東京の政治家が想像する以上に自民党への逆風が吹き荒れている」と指摘した。
前橋市長選から一夜明け、市内の交差点で通行人らに手を振る初当選を果たした小川晶氏=2024年2月5日午前 写真提供:共同通信社
「自民王国」といわれる群馬県で4日、前橋市長選が投開票され、野党系の小川晶氏が初当選した。政治資金パーティーの裏金事件を巡る政治不信が背景にあったとみられる。また、混迷の様相を呈していた京都市長選も同日行われ、自民、公明、立憲民主、国民民主の4党が推薦した元官房副長官の松井孝治氏が初当選した。
辛坊)どちらの市長選結果からも、東京の政治家の皆さんが想像する以上に、自民党に対する逆風が日本全国で強烈に吹き荒れているということがよく分かります。
京都市長選では、自民など4党が相乗りした松井孝治氏が、共産党の支援する福山和人氏を破って初当選しましたが、想像もできないくらいの僅差でした。得票数は松井氏が17万票余、福山氏が16万票余です。
辛坊)京都市は長く共産市政が続いた時代がありました。ここ数十年、地方自治はもはや共産市政の時代ではないという感覚でしたが、今回ふたを開けてみれば、松井氏と福山氏の差は1万票余です。松井氏には自民など4党が相乗りしていながら、共産党が単独で支援した福山氏と僅差だったということは、松井氏の当選は薄氷といえます。
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過去にも小渕優子氏、安倍晋三氏らが「不起訴」に…裏金捜査でまた分かった自民党政治家の「過保護」ぶり:東京新聞 TOKYO Web
昨年11月から政界を揺るがしてきた自民党各派閥の政治資金パーティー事件。しかし、松野博一前官房長官ら議員本人の立件は見送られ、各派閥の会計責任者らの立件止まりで、東京地検特捜部の捜査は事実上、終了するとみられる。大山鳴動して…と言いたくなる結果だが、改めて国会議員の刑事責任上の「過保護」ぶりが浮かんだとも言える。今すぐやるべき「政治とカネ」問題改革とは。(西田直晃、山田祐一郎)
◆キックバックを自白した「うっかりさん」もいた
自民党「政治刷新本部」の会合であいさつする岸田首相(左から3人目)と、出席した(左から)菅前首相、茂木幹事長、右は麻生副総裁=16日、東京・永田町の自民党本部で
「全く中途半端。国民の怒りが分かっていない」
特捜部の捜査終了についてこう憤るのは、自民5派閥の政治資金パーティーの収入明細を調べ、刑事告発した神戸学院大の上脇博之教授(憲法学)。
「こちら特報部」は昨年11月、上脇氏が体調の悪い中、「地べたを這(は)いつくばるようにして」3カ月間かけて調査し、年末年始返上で告発状を書いたことなどを報じた。「どう考えても事務方だけで行えるわけがない。仮に安倍派だけに限っても、7人の幹部の携帯電話を押収し、事務方との通信記録を精査するべきだった。証拠がなかったわけではなく、捜査を尽くしていないだけだ」
19日、自民党安倍派の臨時議員総会の後、報道陣に囲まれる塩谷立座長(手前中央)
今回、特捜部の捜査が始まって間もなく、安倍派の塩谷立座長が昨年11月末、パーティー券の販売ノルマ超過分のキックバックを「あったと思う」と記者団にうっかり”自白”。派閥の所属議員にかん口令が敷かれる中、政治資金収支報告書への不記載疑惑が浮上し、翌月には二階派、岸田派にも飛び火した。
◆一般国民だったら罰せられるあやまちに見えるが
年が明けると、安倍派から約4800万円のキックバックを受け、裏金にしていたとされる衆院議員池田佳隆容疑者(57)が政治資金規正法違反容疑で逮捕された。捜査の広がりに注目が集まったが、通常国会召集を1週間後に控え、捜査はあっけない幕引きを迎えた。
19日午後、JR新橋駅前で待ち合わせをしていた会社員村上彰啓さん(41)は「政治家本人までは伸びず、やはりトカゲのしっぽ切りになってしまった。大物になればなるほど、その傾向が強いように思える」と落胆し、「裏金づくりの温床の派閥政治を変えるには、政治家本人が自身の疑惑を語る場を設けてほしかった」と突き放した。
清和政策研究会(自民党安倍派)の会合が行われた党本部=19日
キックバックされた金額の多寡により、捜査の行方が左右された感が否めない点に失望の声も。団体職員小沢康成さん(55)は「民間なら脱税。金額が10万円だったとしても、報告なしは許されない。この違いは何なのか」と語気を強めた。「捜査が終わっても国民が納得しない。キックバックを受けていた議員を記憶しておき、次の選挙で投票しないようにする」。駅近くの居酒屋に客引きをしていた女性(21)は「有罪にならなくたって、何百万円とか、何千万円とか想像すらできない大金。レモンサワーは299円ですけどね」と皮肉った。
◆「検察は本当に中立・公正なのか」
組織的な裏金づくりの慣行が明るみに出たものの、一部の政治評論家や元国会議員からは「議員本人の立件はない」「政治にカネがかかるのは当然」といった開き直るような発言も聞こえてきた。
冒頭の上脇氏は「誰かさんがたまたま犯した罪ではなく、みんなで一緒に赤信号を渡ろうとした事件。キックバックが少なかった議員がいても、全体で計算すると億単位だ。金額で線引きするのはおかしい」と強調し、こう続けた。
「一般市民は安い商品を万引しただけで、窃盗罪で起訴される。検察は本当に中立・公正なのか疑問が残る結果だ」
◆秘書は起訴、議員は不起訴
これまでも政治とカネを巡る事件で秘書や会計責任者が責任を負った一方で、政治家本人が自身の責任追及を免れた例は枚挙にいとまがない。
2020年12月、「桜を見る会」夕食会事件で、自らは不起訴となった後、記者会見する安倍元首相=東京・永田町で
1988年に発覚したリクルート事件では、竹下登元首相の金庫番だった秘書が自殺。竹下氏は立件されなかった。2014年に判明した小渕優子元経済産業相の資金管理団体を巡る事件は、会計責任者の秘書らが在宅起訴されたが、小渕氏は不起訴に。安倍晋三元首相の後援会が「桜を見る会」前日に主催した夕食会の費用を補填(ほてん)した問題では、20年に公設第1秘書が略式起訴されたが、安倍氏は不起訴。今回も虚偽記入で立件されたのは、派閥の会計責任者で、幹部議員は共謀が認められなかった。
1980年代に自民党の国会議員秘書を務めた経験がある政治評論家の有馬晴海氏は「議員の指示でやったとしても会計責任者や秘書が『自分の一存』と捜査機関に説明すれば、それ以上は議員を追及できない。そのために秘書がいるというのがかつての常識だった」と明かす。時代とともに、議員の身代わりにという意識は薄まっているというが、番頭や金庫番など側近秘書や会計責任者ほど議員と一蓮托生(いちれんたくしょう)という思いの人は多いという。「議員と秘書の関係は密接。自分がしゃべると大変なことになる。秘書の代わりはいても議員の代わりはいない」
◆金額で立件の可否の線引きか…問われる「市民目線」
そんな関係なら、議員が意図しない報告書作成は考えにくいが、議員本人の共謀を立証できないのはなぜか。元特捜検事の郷原信郎弁護士は「長年続いてきた派閥の虚偽記入の最後の1年分について、あらためて共謀があったと認定するのは難しい」と説明する。
その上で「政治資金規正法が禁じる政治家個人への寄付行為として立件できなかったのか」と検察の捜査の進め方に疑問を呈する。個人への寄付の罰則は禁錮1年以下と罰金で時効は3年。虚偽記入の禁錮5年以下と罰金、時効5年よりも軽く、対象にできる裏金が限定される。「検察は裏金の額の大きさで虚偽記入を対象としたのだろう。その結果、国民の期待と現実にギャップが生じた」
今回、国会議員で立件されたのは、いずれも4000万円以上の還流を受けたケース。金額の多寡で線引きされた形だ。「金額によって立件を決める検察の『相場観』に法的な根拠は全くない」と阪口徳雄弁護士は批判する。「立件されていない議員についても個人への寄付違反で告発することが必要。不起訴であれば検察審査会に審査請求し、市民目線で立件の『相場観』を判断するべきだ」
◆派閥解消でさらに裏金の実態が見えにくくなる恐れも
同法では、政治家の責任が問われるのは会計責任者の「選任及び監督」に相当の注意を怠った場合と、かなり限定的だ。だがこれまで議員の監督責任強化を求める動きがなかったわけではない。公明党は民主党政権時代、選任と監督のいずれかを怠った場合に責任を問えるとする改正案を提出したが実現しなかった。立憲民主党は今回の事件を受け、虚偽記入の際に議員本人も処罰の対象とするよう法改正を目指す方針だ。
岸田文雄首相=19日、自民党本部
郷原氏は「国民は今回、税を免れて自由に使える多額のカネに対して反発を抱いている。脱税の視点からの責任追及も必要だ」と強調する。岸田首相は、出身派閥の「宏池会」の解散を表明したが「問題の本質は派閥ではない。政治資金制度全体の改革が求められている」。
前出の上脇氏も「派閥がなくなると、今までより見えにくい形で裏金が流れる」と危ぶむ。その上で上脇氏個人の告発で支えられる現状から脱却する必要性を訴える。「行政監視機関のような公的な監視の仕組みが理想だ。中立性・公平性を担保できるのかという問題があるが将来的にはそのような第三者機関があってしかるべきだ」
◆デスクメモ
岸田首相が2022年に開いた自身の政治資金パーティー6回分の利益率は約9割に上っていたという。ぼったくりバーさながらだが、それでもカネを出す側は当然、見返りを期待するし、出させる側もそれに応じざるを得なくなる。パー券問題は、裏金だけが問題なのではないのだ。(歩)
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「改革できなければ自民党はつぶれる」石破茂元幹事長が語る、政治とカネのあるべき姿:東京新聞 TOKYO Web
自民党の石破茂元幹事長が、本紙のインタビューに応じた。最近は「次期首相にふさわしい政治家」を問う各社の調査でトップとなることが多く、国民的な人気の高い石破氏。自民派閥の政治資金パーティーを巡る裏金事件に関し、党内で政治改革の議論が進展しなければ党自体の存立に関わると強い危機感を示した。
党内での検討作業については、1988年のリクルート事件発覚を機に国民の政治不信が高まった際に政治改革の議論に深く関わった立場から、政治資金の透明性確保や派閥解消への決意などを掲げた「政治改革大綱」を再検証するよう改めて訴えた。一問一答は次の通り。(聞き手・中根政人)
政治改革について話す自民党の石破茂元幹事長
石破茂(いしば・しげる) 1957年生まれ。慶応大卒。三井銀行(現・三井住友銀行)勤務を経て86年の衆院選で初当選し、旧鳥取全県区、鳥取1区で連続12期。93年に自民党を離党し、新進党などを経て97年に復党。防衛相、農相、自民党政調会長、党幹事長、地方創生担当相などを歴任。2008年、12年、18年、20年の4回、自民党総裁選に出馬した。
◆頭を下げて嵐が過ぎるのを待つ、なんて甘い
―岸田文雄首相(自民党総裁)は、年明けの早い時期に政治改革などを検討する新たな組織を党内に発足させると表明した。
「できれば年内が望ましかったが、(党総務会で)『全議員参加の会議体が必要だ』と私も発言した。発足自体はあるべきだと思う」
―政治改革について、自民党内で実質的な議論ができると思うか。
政治改革について話す自民党の石破茂元幹事長
「できなければ、党はつぶれる。むしろ自民党が先手を打って、こんなに議論をしているということが見えなければいけない。当選回数の少ない議員が地元に帰った時に『政治改革大綱の検証をする』『自分もそこに参加する』と言えるようにしてあげないとだめだ。ひたすら頭を下げて、嵐が過ぎるのを待てば何とかなるという、そんな甘いものではない」
―12月11日のBS番組で、岸田首相について「(2024年度の)予算が通ったら『辞めます』とか、そういうのはありだ」と述べた。
「岸田さんが辞めるべきだと私は一言も言ってない。可能性として、いろんなことがあると言っただけだ。そこだけ切り取って、そういう報道になる。(責任の取り方は)岸田さんが決めることであって、われわれがとやかく言うことではない」
◆1989年「改革大綱」は派閥の弊害除去にも力を置いたが
—三十数年前の自民党内での政治改革を巡る議論を振り返ってほしい。
「党政治改革委員会の後藤田正晴会長(元官房長官)の下で1989年5月に政治改革大綱をつくった。当時、議員による会議を丸3日やった覚えがある。大綱では、派閥の弊害除去などにも力点が置かれていた。総裁や副総裁、幹事長などの党幹部や閣僚の派閥離脱、派閥主催のパーティー自粛、閣僚のパーティー自粛などが書いてあった。その後、伊東正義先生(元外相)を本部長とする政治改革推進本部ができたが、ここでの議論はむしろ、選挙制度改革に特化していってしまったような気がする」
政治改革大綱 自民党が1989年5月、リクルート事件による政治不信の拡大を反省し、党再生につなげるとして決定した改革の基本方針。政治倫理の確立や政治資金の規正、選挙制度改革、国会・党改革をテーマに具体的な対応策を挙げた。派閥については「解消」への決意を掲げ、総裁、幹事長などの党幹部や閣僚が在任中は派閥を離脱することを盛り込んだ。
—当時、自民党若手を中心とした政策勉強会「ユートピア政治研究会」に所属していた。当時の議論は。
細川政権が進めた政治改革4法案に自民党の方針に反して賛成し、党の処分を受けた石破茂氏=1993年12月、国会で
「ユートピア政治研究会は武村正義さん(元官房長官)が座長で、中核メンバーは10人くらいだったと思う。当時当選1回の鳩山由紀夫さん(元首相)、渡海紀三朗さん(現・自民党政調会長)、そういう人たちだった。そのころ、『なんでこんなに金かかるのか』と。秘書の給料や私設秘書の給料。あとは、(議員が)事務所を3つも4つも持ってたから、その家賃。電話代、ガス代、水道代、車の維持費。そういうものを全部積み上げていくとそういう金額になる、と。この中で、『民主主義のコスト』として評価されるものは何なんだろうということだった」
—小選挙区比例代表並立制の導入も、政治改革の「成果物」だ。
「同じ自民党同士で争っていないので、確かに金はかからなくなった。だが、事務所の数や秘書の数は制限されていない。『有権者の意思は奈辺にありや』ということをきちんと把握するために『これくらい事務所が必要』『これくらい秘書が必要』ということに反した事務所や秘書の使い方をしてはだめだ」
◆好き嫌いや利権が優先される派閥運営は律するべき
—2012〜14年に党幹事長を務めていた際、政治改革への取り組みをどう進めようとしたか。
「野党時代には、政調会長として極力、能力主義的な人事に努めたつもりだ。幹事長になった時には、資金も人事も選挙応援も政策研究も、党に一元化したいという思いはあった。党の機能を強化することはできたが、資金を党に一元化することはできなかった。それでも当時は与党になったばかりで、党内にも謙虚さがあったと思うが、『数は力』『力は金』みたいな、そういうクラシックな考え方に、いつの間にか戻っていったのかもしれない」
—派閥の存在の是非についてどう考えるか。
政治改革について話す自民党の石破茂元幹事長
「新聞社にも、テレビ局にも、大学にも、官庁にも派閥はある。派閥がなくなることはないと思っている。ただ、われわれは政党として、単なる好き嫌いや、利権、そういうものが優先されるような派閥の運営は、決して国家のためにならないと律するべきだ。派閥が、ポストと資金の配分機能だけに特化してしまうというのは、あるべき姿ではないだろう」
—石破さん自身も、派閥「水月会」を率いていた時期がある。
「今から思えば、実験的な派閥だった。政策集の出版だったり、毎月、メンバーの議員が交代交代で講演と質疑応答をやっていた。『金とポストが欲しければ水月会なんかにはいないよ』と言った人がいたという話だが。裏金なんか配ってないからね。政策はきちんとやった。選挙も強かった。でも長続きしなかったのはなぜなのか。理想的な派閥とは難しいということかもしれない」
◆パーティーは収支を明らかに、有権者の納得感を得る努力をすべき
—裏金疑惑でクローズアップされた政治資金パーティーの問題点は。
「(政治資金収支報告書に氏名などの記載義務があるのが)寄付なら5万円超、パーティーは20万円超だが、利益率が90%を超えるようなパーティーは、パーティーに名を借りた寄付ではないのかと言われるだろう。パーティーが全てだめだということではなく、収支を明らかにし、献金をしてくれる法人や個人、そして一般の有権者の納得感を得る努力をすべきだ」
—国政の課題について。
政治改革について話す自民党の石破茂元幹事長
「憲法の議論はあまり進捗(しんちょく)しているとはいえない。特化して議論されているのは、緊急事態条項の新設によって衆院議員の任期を延長するという話だが、それが憲法改正の一丁目一番地かというと、私は違うと思っている。憲法改正で私がこだわるのは、日米同盟の本質をより対等にしていくことだ。本来すべきは、ウクライナや(パレスチナの)ガザ(地区の情勢)、北朝鮮の核保有などの状況変化を受けて、憲法をどう変えたらわが国の安全保障に資するのかという議論ではないか。国会で本当は議論しなければならないことがいっぱいある。通常国会が『パーティー国会』になるのは、私はよくないと思っている」